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静かなブーム 飲食企業が複数に分社する理由とは

飲食店づくり

最近では中小規模の企業が分社化することが増えているようで、 理由のホントのところを聞かれることを尋ねられることがあります。 メリットは企業により様々で、一概に「これだ!」と一面的に捉えられることではないと思っておりますので、代表的な分社化の理由を記してみます。

分社化の様々な形

業態別やエリア別、事業別などで複数に分社している飲食企業があります。

同じ人物が代表を務めるケースや違う人物が代表を務めるケースもあり、分社の是非も含め企業により合う形も様々なようです。

分社化の理由① 節税の側面

分社化の目的が節税のためであろうということは皆さん予想がついているようですが、やはりそれは理由の一つだと考えられます。

法人税は利益に対して課税されるのが原則ですが、資本金1億円以下の中小企業においては800万円以下の利益は軽減税率15%(企業により19%のケースもあり)が適用されます。それを超えるものには23.2%の税率で課税されるということになります。

ということは単純に考えると利益が800万円以上の企業は分社すると、節税効果が見込めるわけです。

とはいえ、もう一つ会社を作るわけですから設立や維持のコストもかかるため、一概に節税分がそのまま企業のキャッシュとして活用できるとは限りません。

加えて、日常的な企業会計と税務会計では大なり小なりの違いがあり、経常利益=課税所得とはならないケースが多いので、そこには税務会計のプロの視点を交えて慎重な判断を期すことが重要です。

また、節税のためだけを理由とした分社は税務署から指摘され高い税率を課されるケースもあるようでその点も注意が必要です。

では、それ以外にどのような理由で分社化する企業があるのでしょうか。

分社化の理由② 経営効率の向上

業態を複数所有している場合、ほとんどのケースで人気不人気の業態間の優劣が出来てしまいます。

人気の業態に経営資源を集中させることもできますし、不人気業態をV字回復のために集中という戦略もあり得るでしょう。

その場合、組織が小さい方が管理部門や意思決定プロセスが簡素化でき、資源集中による効率を高めることも可能になります。

エリアが分散している場合にも同様の効果が期待できます。

分社化の理由③ リスク分散

一つの事業会社が何らかの理由で大きな損失を出してしまった場合、または継続的に赤字が続いているような場合には、一社ですべての事業を運営しているとその損失が他の事業にも影響を与えてしまうことがよくあります。

会社を複数に分けていると不採算の事業会社に影響が及びづらく、事業を行っていくことができます。

企業全体としては倒産リスクを回避することができ、安定的な運営を実行できる可能性も高まります。

分社化の理由④ 事業承継

分社した企業の代表を一人で複数社努めることも可能ですが、それぞれ別の人物が務めることも可能です。

それぞれ別の人物が務めることで、一社だけしかない場合に比べその後の事業承継もスムーズに運ぶことが期待できます。

分社化の理由⑤ 資金調達

事業承継の項と似た部分もあるのですが、代表が元の企業と別の人になっていることで金融機関からの融資がスムーズにいくことも期待できます。

また、最近では中小企業でもホールディングス制を導入する企業も増えています。

ホールディングス化しているケースでは、そのホールディングスがグループ全体の資金調達を引き受けることで融資を受けやすい状態にできることもあるようです。

ホールディングスが資金調達を引き受けることで、事業会社はその事業に専念しやすいという面も出てきます。

自社に合う形をじっくり検討してください

このように代表的な例だけでも分社化の理由は多岐に渡ります。

その他にも交際費の枠の拡大など副産物的にも様々な理由が考えられます。

中小企業でも分社化やホールディングス化を実施している企業は増えているそうです。

ただし、会社の数が増えるほど管理も大変になることは間違いないので、自社に合う形をじっくり検討して踏み出すべき領域のようです。

酒村洋行氏の写真

筆者紹介


酒村 洋行(株式会社アスピット)

都内のフレンチやイタリアンレストランにて、サービススタッフおよびソムリエとして豊富な経験を積む。

その後、大手酒類メーカーに活躍の場を移し、飲食店向けコンサルティング部門にてコンサルタントとして従事。

飲食店の代表取締役を経験した後、2020年3月より株式会社アスピットにて現職。現場と経営、双方の視点から外食産業の課題解決に取り組んでいる。

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