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コラム

味をつなぐ 飲食店にとっての“おいしいの維持“はどうする

教育 飲食店づくり

メニューやレシピ開発には産みの苦しみがありますよね。 原価額や率を気にしつつ調理時間もできることならあまり長くなく、もちろんおいしくなくてはなりません。 おいしいレシピが開発できたとしても店舗でそれを再現するのも簡単ではありません。 開発者の方々はここにも常に苦心されていることだと思います。 店舗でクオリティの再現までうまくいったとして、これを店舗内で長期間一定以上に保ち続けることも、もう一つのハードルです。 特に近年では人手不足やせっかく入ってくれた人材が辞めてしまうなどの動きが顕著でクオリティの維持が難しくなっているようです。

修行期間が長い業種業態の例

お寿司屋さんやオーセンティックバーのように数年間の修行期間があって初めて一人前になれる業種では、その期間中に人材が辞めていってしまうという長年の構造的な悩みがあります。

もちろん、いつかお店が認めるおいしいレベルのお食事やお飲み物をお客様に提供できるようになるための技術と知識を習得するための大事な期間なわけですが、近くにお客様がいながら調理、作成、提供することが許されないのは、修行の身からするとなかなかに長い時間に感じられます。

自分が作ったもので早くお客様に「おいしい」と言われてみたいんですよね。

これについて新たな取り組みを始めている企業があります。

とある高級寿司チェーンでは、若手有望株が握る寿司店を出店しています。

まずはそこに配属されたいと若手スタッフもモチベーションが上がりました。

また、ベテランが握るお店よりも同等のネタを安価で食べられるということで、お客様もメリットを感じて大盛況です。

他の寿司店はもちろん他の業種業態でも同様の出店を始めたところも出てきていて、新たな人材の活躍の場の創出、人材流出への対策、お客様からの支持も得られるとして静かなムーブメントになっています。

メニュー開発を利用した手法

新店の出店となると数千万円程度は投資が必要になるので、既存店舗の業態変更という形が多いようです。

業態変更とはいえ数百万円以上の投資がかかることもあるので、どの企業でもすぐに手が出せるという方策ではありません。

それ以前からあった手法ではありますが、店とは言わないけれども、メニュー全体またはメニュー内の数カテゴリーの開発を新たな人材を中心に実施するという企業もあります。

これもやはりモチベーションを高めることに役立つようです。

これまでなかったような新たなメニューの方向性などが出てきてフレッシュなメニューにできるという効果もあります。

よく社内公募で新アイテム募集という手法も使われますが、営業時間中、コンロを一口ずっと占領してしまうなど、あまり現実感がないメニューが多かったり、そもそも公募数が少ないなどのことになってしまいうまくいかないことが多いです。

メニュー全体やカテゴリー全体、一点突破の名物メニューを考えるなど、歴が比較的浅い方々中心のチームを編成して実施する方が良いメニュー案が出てくる確率が高まります。

監修にベテランも参加してもらうことで、修行期間が短いお店でも実施できる方策です。

今いるスタッフに味の番人を増やす

お客様への提供やメニュー開発に携わるなどはスタッフのモチベーション維持や向上のための施策で、それにより入社した人材に長く定着、活躍してもらうための策ですが、今すでに人材が不足していて、数少ない人材に今の味を伝承することも考えなくてはなりません。

・商品の詳細なレシピ化

・調理工程の映像化

など、正攻法を実施することは非常に重要です。

加えてもう一点、最近実施する企業が少しずつ増えているのが、

・定期的な試食会の実施

です。

サービススタッフはもちろんキッチンスタッフにおいても、全メニューを食べたことのないスタッフは意外と多く、その分、味の評価ができる人材が少ないという結果になってしまっています。ということは最初に設計された“おいしい”が分からない状態になってしまいかねないということですね。

複数回来てくださっているお客様だけが“知っているという状態にもなっているということでもあります。

新メニューやおススメメニューの試食会は実施されることも多いですが、グランドメニューの試食会は新規開店時に実施された後はあまり実施されないのが現状です。

一気に全アイテムの試食会というのは準備的にも時間的にも難しいので、複数回に分けて実施するのが現実的な方法です。

少ない人材でおいしいの維持継続を目指すには有効な手法であるようです。

一部を外部に委託した味の承継

また、最近では仕込みの代行業者も増えています。

メニュー内の一部のアイテムの仕込みを外注して、必要量を店舗に配送してもらい最終の調理は店舗で仕上げて、お客様に提供するという手法です。

仕込みの内容は野菜のカットなどの一般的なものはもちろんですが、店舗独自のドレッシングやソース、火入れの仕方など、小口のPBを作ってもらえるような対応をしてくれる事業者がほとんどです。

多少原価が上がってしまう可能性は否定できませんが、人手不足の中でおいしいの維持継続を実行できる有効な手法であると考えられます。

店舗のおいしい 味をつなぐ

若手に限らず新たな人材に入っていただくのが難しい現在、まずは現有戦力で“おいしいを維持”し、新たな人材にも守りやすい正攻法の実施とモチベーションの維持、向上を狙って、複数の策を絡めて“味をつなぐ”ことを実施する時期にきています。

酒村洋行氏の写真 筆者紹介 酒村 洋行(株式会社アスピット)
都内のフレンチやイタリアンレストランにて、サービススタッフおよびソムリエとして豊富な経験を積む。 その後、大手酒類メーカーに活躍の場を移し、飲食店向けコンサルティング部門にてコンサルタントとして従事。 飲食店の代表取締役を経験した後、2020年3月より株式会社アスピットにて現職。現場と経営、双方の視点から外食産業の課題解決に取り組んでいる。

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