お店の在庫を数える「棚卸し」は、小売店だけでなく飲食店でも必要な作業です。本記事では、棚卸しを実施する目的から確定申告の際の注意ポイントまで解説。 食材やドリンクなどの「商品」と調味料や割り箸などの「消耗品」の違いについても解説するので飲食店経営者の方は、参考にしてみてください。
飲食店の棚卸しとは?
棚卸しとは、店内で保有している原材料や商品の数を確認する作業のこと。在庫を多く抱える小売店や工場で実施されている印象が強いですが、飲食店でもこの作業は必要です。
棚卸しは期末に行われることも多いですが、飲食店の場合は毎月末に実施するのが一般的。飲食店では、仕入れた材料や消耗品のうち、提供や販売していないものが棚卸しの対象となります。
飲食店の棚卸しの必要性と目的
小売店だけでなく、飲食店においても棚卸しは重要です。飲食店で棚卸しを実施する必要性と目的は、以下の通り。
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ここからは、棚卸しの必要性や目的、メリットについて詳しく解説します。
正確な在庫の数量を把握できる
飲食店で棚卸しを実施する目的のひとつは、正確な在庫数を把握することです。在庫数の把握ができていないと仕入れが間に合わず、材料不足で提供できるメニューが減り、客足も減少する可能性がでてきます。
収益を上げられるよう定期的に棚卸しを実施して、在庫が足りないものや余剰分を確認し、不足分を補充しましょう。
在庫の状態を把握できる
棚卸しでは、在庫確認の際に在庫の状態を把握する目的もあります。飲食店で棚卸しの対象になるのは主に食材です。棚卸しでは、在庫数の確認をすることに加え、お客様に提供する食材の品質が落ちていないかを把握しておくことも重要です。
在庫状態を確認する際は、賞味期限や消費期限が過ぎていないか、においや色が変化していないかといった点をチェック。棚卸しの機会を利用して、在庫の数量を確認しながら、食材の品質もしっかり確認しましょう。
仕入れ状況から食材ロスを軽減できる
在庫が多いものを把握することも目的のひとつです。棚卸しでは、仕入れ状況の把握や在庫のバランス調整が適切に行えているかも確認しましょう。
棚卸しを実施していないと、余剰分に気付かないまま追加発注をしてしまい、過剰に在庫を抱えることにもなりかねません。過剰な在庫は使いきれないまま廃棄となり、食材ロスにも繋がります。
仕入れ費用も無駄になり、経営をひっ迫させる原因にも繋がるため、棚卸しの際は余剰在庫がないかをしっかり確認しましょう。
原価率が確認できる
棚卸しによって正確な在庫数が把握できると、原価率が計算できるようになります。原価率とは、売上高に対する原価の割合のこと。飲食店での原価率は30%前後が目安となります。
原価率の計算方法は以下の通りです。
売上原価率(%)=(期首棚卸高+仕入高−期末棚卸高)÷売上高×100 |
売上が高い場合でも、売上原価率が高いと利益を出すことが難しくなります。そのため、飲食店では正確な売上原価率の把握が重要です。売上原価率が高い場合は、提供する価格の見直しや仕入れ元の見直し、材料の調整を実施することで、売上原価率を調整しましょう。
飲食店の棚卸しの流れ
ここからは、飲食店の棚卸しの流れについて解説します。以下の手順で棚卸しを進めると、スムーズに実施できます。
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1. 棚卸表を作成
棚卸しをする際は、まず棚卸表を作成しましょう。棚卸表は、棚卸しの際に在庫の数量や金額などの項目を一覧にして記入するもの。棚卸しの結果が一目でわかるよう記録に残せるのがメリットです。棚卸表は、エクセルといった表計算ソフトで管理するのもおすすめ。
棚卸表では、棚卸金額からお店の利益や税金が計算できるのも特徴です。やみくもに在庫を計算するのではなく、棚卸表を作成してから計算すると経営状況が把握しやすくなります。
棚卸表を作成する際は、次の4つの項目を入れておきましょう。
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ほかにも、材料の形状や大きさ、重さを記入できる項目を作成すると便利です。
2. 在庫数の確認
棚卸表を作成したら、品目ごとに在庫数を確認し、棚卸表に記入していきます。飲食店の在庫は、1個2個と数えられる重さが均一のものから、野菜や肉などの重さが異なるものまでさまざま。材料によって、在庫の数え方が異なる点に注意してください。
間違えないようにするには、あらかじめ品目ごとのカウント方法について決めておくのがおすすめ。開封後の材料や仕込み中のものも棚卸の対象なので、仕込み中のものについてもカウント方法を決めておき、忘れずにカウントするように気をつけてください。
3. 原価の計算
棚卸表へ品目ごとのカウントをし終えたら、最後に原価の計算をします。品目ごとの合計数や合計金額をまとめて、原価を計算しましょう。
中には仕入れをするたびに値段が変動してしまう材料もあります。このような値段が変動する在庫について、一般的に飲食店では、最後に仕入れた際の価格で原価を計算する「最終仕入原価法」を採用します。
飲食店の棚卸しと確定申告への影響
年末の在庫は、確定申告や税金にも影響を与えます。飲食店は、所得を申告するために確定申告を行わなければいけません。確定申告では、毎年1月から12月までの1年間に生じた所得に応じて、納める税金(所得税)が決まります。
飲食店での確定申告で注意しなければならない点が「在庫」です。年内に消費しきれなかった12月末までの余分な在庫のうち、翌年1月からの営業に利用できるような在庫があった場合に、繰越分の仕入れの費用は翌年の経費として計上する必要があります。
このような在庫は、翌年の期首棚卸高として取り扱われます。そのため、年を跨いだ繰越分の仕入れ費用となると、その年の経費として計上できない点に注意が必要です。経費が少なくなると必然的に利益が上がってしまうため、翌年の税金が高くなってしまいます。
できる限り定期的に棚卸しを行って普段からの在庫量を調整し、不必要な在庫を発生させないように心がけましょう。
飲食店の棚卸しのポイント
飲食店の棚卸しのポイントは以下になります。
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ここからは、飲食店の棚卸しのポイントについて詳しく解説します。
定期的に実施する
棚卸しは、定期的に実施することを心がけましょう。棚卸しを年末の1度だけで実施することはおすすめできません。年に1度の場合、記入する品目や価格が多く、スムーズに進められない可能性があります。間隔としては、月に1度実施するのが望ましいです。
飲食店で取り扱う食材は、仕入れの価格変動も起きやすいため、頻繁に棚卸しを行っていないと、正確な原価率を計算できません。棚卸しには、食材の状態を管理できるというメリットもあります。原価率の把握から経営状況を確認するため、定期的に実施するようにしましょう。
流れやマニュアルを用意する
棚卸しを実施する際は、流れを決めたりマニュアルを用意したりするのがおすすめ。流れを事前に決めて、マニュアルやフォーマットを作成すると、棚卸しがスムーズに進められます。
マニュアル化のメリットは、ミスや確認不足を防げることに加え、ほかの担当者が棚卸しを実施する際もスムーズに対応できることです。マニュアルの作成には時間がかかりますが、長い目で見た場合の手間が減るので、用意するようにしましょう。
「商品」と「消耗品」で取り扱いが異なる
確定申告で計上する在庫は「商品」の在庫を指します。料理に使用する「肉」「魚」「野菜」といった材料や、提供するドリンクは「商品」の扱いです。
一方、調味料や割り箸、洗剤等は「消耗品」に当たります。そのため納品した時点で経費として計上できます。
棚卸表は保管の必要がある
棚卸表は、確定申告の際に提出しません。しかし青色申告では7年間、白色申告では5年間の保管が定められています。万が一、税務調査が入った際に、棚卸表を処分してしまって保管していない場合、在庫状況を証明する資料がなく、問題になりかねません。
定められた期間の間、棚卸表はしっかり保管するようにしましょう。
飲食店向け業務支援システムASPITで棚卸を管理するのもおすすめ
飲食店の棚卸しをスムーズに実施したい方には「業務支援システム」の導入がおすすめです。『ASPIT』は外食に特化したシステムとして、あらゆる業態で柔軟に利用できるのが特徴。発注や売上管理から、勤怠やシフト、調理工程表といったさまざまな業務を支援してくれるシステムです。
飲食店経営に関わるさまざまな情報を一元管理できるため、棚卸しの管理やこれまでのデータをチェックしやすいのが大きな魅力。システムを活用して飲食店経営を行いたい方は、ぜひチェックしてみてください。
飲食店の棚卸しで在庫を管理しよう
棚卸しを実施する目的から確定申告の際の注意点まで解説しました。飲食店では棚卸しを実施することで、在庫状況から原価率を計算し、経営状況を把握できるのがポイント。簡単に棚卸しを管理できるシステムもあるので、飲食店経営者の方はぜひチェックしてみてください。