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ROI/ROIC自社の財務パフォーマンスを評価する

日本の中小企業や飲食店の経営を評価する方法として、一般的には売上、営業利益(経常利益)を予算や前年実績と比較して量る方法が用いられますが、一方で、資本効率を中心にした経営評価も成功の道の一つと考えられています。 資本効率を評価するための重要な指標として、企業が事業活動を通じて得た利益を計測して評価する方法であるROI(Return on Investment:投資利益率)とROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)という2つの指標があります。 今回のコラムでは、それぞれの特徴と飲食店経営における活用方法について詳しく分かりやすく説明をしていきたいと思います。

ROI/ROIC自社の財務パフォーマンスを評価する

ROIROICについて

ROIReturn on Investment:投資利益率)

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飲食店経営においてROIは、新メニュー開発や販促マーケティング活動など、特定の投資に対するリターンを測るために活用される指標です。

ROIを計算するためには、投資後の純利益を投資原価で割ります。
具体的には、「(投資による売上-投資費用)÷投資費用」を計算します。

例えば、高級食材を用いたメニューを開発したとします。その開発コストと、その新メニューから得られる売上(または利益)を比較し、ROIを計算します。ROIが高ければその投資(新メニュー開発)は成功していると言えます。
逆にROIが低ければその投資を再検討する、または投資を打ち切る判断材料になります。

あなたが100万円を新メニュー開発に投資し、それが200万円の売上(利益)につながった場合、そのROI(200万円 - 100万円) / 100万円 = 100%となります。
これはつまり、あなたが投資した100万円が100%のリターンをもたらしたということです。

ROICReturn on Invested Capital:投下資本利益率)

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一方、ROICは会社全体としての経営効率を評価します。

ROICは「税引き後純利益+金利費用」を「総投資資本(自己資本+借入金)」で割ることで計算します。

飲食店に例えれば、新店舗を開業する際に、その投資がどれほど効率的であるかを検証するためにROICが活用できます。また、現在運営している店舗が効率的に運営されているかを判断する際にも役立ちます。

「会社が全ての資本(現金、株、不動産など)をどれだけ効率的に使って利益を上げられるか」
例えば、会社が1000万円の資本を使って200万円の利益を出した場合、そのROIC200万円 / 1000万円 = 20%となります。これはつまり、会社があらゆる資本を使って20%のリターンをもたらしたということです。

要するに、ROIなら特定の投資の効果を評価し、組織全体の投資効果を評価するならROICを用います。
飲食店経営においては、これら2つの指標を適切に組み合わせることで、より効率的で収益性の高い店舗経営が可能になると言えます。

では、ROICについてもう少し詳しく見ていきましょう

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組織全体の投資がどれだけ価値ある結果をもたらしたか?

ROICは、投下資本利益率と呼ばれるように投資した資本に対する収益率を表す財務指標のことです。企業の財務パフォーマンスを評価する指標として一般的に使用されています。具体的には、事業活動を通じて得られた利益が投資された資本に対してどれだけの価値をもたらしたかを示します。企業の収益力を総合的に評価できる重要な指標です。

飲食店経営における新規出店に例えると「投資」は、テナント賃料や内外装費用、厨房設備、POSレジなど設備にかかる費用、開業時の食材仕入れや在庫、人件費や採用にかかる費用、広告費など新たな店舗を開業するために必要なコストを含みます。対する「利益」は、新店舗が稼いだ純利益(売上利益からコストや経費を差し引いたもの)であり、会社全体が全ての資本をどれだけうまく使って利益を出せているかを見ることができます。

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ROICの計算

売上高の算出

これは単純に経営する飲食店が売上げた全ての収益を指します。

営業利益の計算

売上高から日々の営業にかかるすべての費用を差し引きます。原材料費、人件費、賃料、リース費、水光熱費、販促費など、店舗運営にかかる全ての費用を含みます。この計算で得られるのが「営業利益」です。

税引き後運用利益(NOPAT)の計算

ここでは、得られた営業利益から税金を差し引きます。具体的には、営業利益に法人税率を適用して税金を計算し、それを営業利益から差し引きます。

NOPAT=営業利益×(1-法人税率)

例えば、ある月の営業利益が500万円で、法人税率が30%だとします。その場合のNOPATの計算は以下のとおりです。

NOPAT500万円×(1-0.30)=500万円×0.70350万円

飲食店の場合、売上高から原材料費、人件費、賃料などの店舗運営に必要なコストを差し引いた残りの金額が運営利益になります。そしてこの運営利益から企業が支払うべき税を引いた額が税引き後運用利益(NOPAT)です。

このNOPATが飲食店経営における、税金を差し引いた後の「純営業利益」になります。言い換えれば、お店が本来の運営業務から得られる収益額を示しています。この数字が大きいほど、店舗経営は健全であると評価できます。

総投資資本額の計算

総投資資本額は、企業が事業活動に必要な投資すべての合計額のことです。飲食店の場合、店舗の設備や機器の費用、テナント取得にかかる費用、在庫(食材や飲料など)の購入費用、そして借入金などの全てが投資資本に含まれます。

ROICの計算

ROICNOPATを総投資資本額で割った値として計算されます。これは企業が投資に使った資本に対してどれだけ収益を上げられているかを示す指標です。ROICは一般にパーセンテージで表現されます。これにより、投資された1単位の資本に対して企業がどれだけの収益を生み出しているかが分かります。この比率が高いほど、その企業が効率的に投資を運用できていると評価することができます。

ROICによる財務健全性の評価

飲食店経営においては、鮮度を保つための在庫管理、人件費のコントロール、効率的な設備投資等により、投資資本を出来るだけ少なく制約し、収益性を高めることが求められます。その結果をROICとして定量的に評価することで、経営の効率性を把握し、改善の方向性を見つけることが可能になります。

また、ROICは他の企業との比較を可能にします。同業他社と比較することで、自社の経営効率の位置付けを理解し、競争環境の中で自社がどのようなポジションにいるかを把握することができます。

さらに、投資家や貸し手にとっても重要な指標となります。高いROICはその企業が資本を効率的に使い、安定した収益を生むことができると評価することができます。逆に、ROICが低いことは投資リスクが高いことを示す可能性があります。

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自社の財務パフォーマンスを評価

どのようなビジネスであれ、ROICは収益性と資本効率の重要な指標です。飲食店経営においてもROICは重要な意味を持ち、事業戦略の策定や経営判断を行う上で有用な指標となります。

ROICの計算結果は、銀行から融資を受ける際や、投資家による投資判断、さらには企業間での取引における与信判断などにおいて重要な意味を持ちます。

業界平均との比較

同じ飲食業界で動いている他のお店のROICとあなたの飲食店のROICを比べてみましょう。自店舗が飲食業界の平均より高ければ、あなたは他の店より上手に資金を使って利益を出していると言えます。

過去の数字と比較

自店舗のROICが前の年や前の四半期と比べて上がっていたら、それはあなたがより一層資本を上手に使って利益を出せるようになった証拠です。一方、ROICが下がっていると、資金の使い方が効率的でなくなった、または経営環境が厳しくなったとも取れます。

飲食業界は変化が激しく、投資戦略が事業の成敗を左右します。新規開店、リノベーション、新メニューの開発、フランチャイズ、デジタル投資など、多様な投資選択が必要となります。そのため、ROICの分析は有用で、事業のパフォーマンス改善、資本配分、投資優先順位の評価などに利用できます。これは経営の質の向上と企業の長期的な成功に寄与します。

参考リンク:ASPIT(アスピット) https://aspit.jp/

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