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飲食店のワンオペは差別化にもなり得る

顧客の行動変容、人手不足、物件の立地や規模の問題などで、飲食店のワンオペを検討される方々も増えています。 と言ってもやったことが無い方にとってワンオペに振り切ることは勇気がいることですし、複数でのオペレーションとどう変えるべきなのかもポイントが分からないという方も多いようです。 そのような方々のために飲食店のワンオペに際しての留意点をまとめます。

飲食店のワンオペは差別化にもなり得る

オペレーションを振り返ってみる

ワンオペ構築で留意すべきは省力化ということに尽きると思いますが、人気の飲食店を作る上ですべてを省力化というのは中々できることではありません。

どこに力をかけてどこを省力化するかという振り分けが、現状の飲食店におけるワンオペの構築の根幹になるでしょう。

ワンオペではキッチン担当、ホール担当という概念が無くなりますから、キッチンエリアと客席エリアの大まかな役割を挙げてみます。

キッチンエリアの役割

・仕込み
・調理、ドリンクメイク
・提供(客席サイドの場合も多い)
・備品、皿の洗浄

省力化できる部分は少ないのがキッチンエリアです。現代では食器洗浄機を使うことは前提になっていますので、食器洗浄機を使用するというのは省力化とは言い難い部分ですし、仕込みや調理についてもほとんどの部分にどうしても手をかけなければなりません。

業務用で自動調理器なども出てきていますので、それらを導入することは可能です。ただどうしても高価であることが多いため、投下資金に余裕がある店舗では有効という形になってしまうでしょう。

客席エリアの役割

・お出迎え、席案内
・オーダーテイク
・提供(店舗の形状によりキッチンからの提供もある)
・中間バッシング
・会計
・バッシング、リセット
・電話対応(予約など)

客席エリアでは営業前後の清掃以外はほとんど営業時間内で起こることです。

とはいえ、システムなどの介在により省力化できそうなことが多く含まれます。

配膳ロボや回転寿司などで見られるバッシングの自動レーンなども飲食店の省力化の手段ではありますが、ワンオペ店舗では投資が重い場合も多いでしょう。

お出迎え、席案内、オーダーテイク、会計がテクノロジーによる省力化が期待できる部分です。

営業時間外

・店舗、厨房清掃
・開店準備
・店舗の状況報告(チェーンなどで必要な場合)
・売上入金
・発注、検品
・勤怠(一人分)
・電話対応
・仕込み

やるべきことは結構多いですが、特にワンオペ店舗の場合、できることならほとんどの時間を仕込みに充てるのが大事な要件です。

その他の部分をシステムの利用や外注、チェーンの場合本部の人員による代替など、許されるコストのギリギリまで振り分ける判断が必要になります。

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メニューを絞る視点

ワンオペとなると、たくさんの人員でオペレーションするものよりもある程度「メニューの数を絞る」必要が出てきます。

人気視点とスクラッチ度

既存店をワンオペにする場合、これまでの集客の素になっているメニューを選択することが中心になってきますし、新店を考慮する場合にもやはり集客が見込める自信作を中心にすることになるはずです。

この際に注文を受けてから提供する工程でどの程度スクラッチが必要であるかをよく考慮しなければなりません。

例えば、

・注文を受けてから
・お皿を温め
・材料を切り
・調味料もその場で量り合せ、
・数分から数十分味をなじませて、
・ストーブやオーブン、蒸し器などで火を入れ、
・温めていたお皿に盛りつけて、
・敷板に乗せる
・提供

注文を受けてから提供するまでに直接手を動かすことが多い、言い換えればスクラッチ度が高い例です。

極端な例に思えますが、複数でオペレーションするお店であれば、一人ですべてを受け持つわけではないので、案外普通にやっているスクラッチ度ですよね。

高級店になるほどスクラッチ度が上がる傾向があります。

といって集客のためのメニューですから外すわけにはいきません。

既存店であれ新店であれ、ワンオペとなるとやはりこのスクラッチ度を下げていく必要があります。

特に仕込みに振り分けられる部分は無いか。という点と営業中でも常時ほったらかしにできる状態を作れる部分は無いか。という視点になりますよね。

上の例で言えば、

・材料を切る
・調味料を量って合わせる
・味をなじませる
・火入れ
・お皿を温める
・敷板に乗せる

の全ての部分で仕込みかほったらかしのどちらかを検討できるかもしれません。

原価視点

集客のための人気メニューは原価率が高いことが多いです。

やはり、お客様はお店側が公表しなくても飛びぬけて原価率が高いものには、コストパフォーマンスの良さを感じて、人気メニューになっていく傾向があります。

それで集客を目論むのですからたくさん売れることは狙い通りですが、ワンオペでメニュー数を少なくしている場合、その人気メニューにオーダーが集中してしまい、

(売上 - 原価)で計る売上総利益(粗利)で見ると、利益があまり発生しないという可能性が出てきます。

実はここにワンオペの魅力が詰まっています。

ワンオペの経営的優位性は、人件費が一人分しかかからないことですよね。

加えて固定費(家賃、減価償却費)が低く抑えられていれば、原価率の高い人気メニューにオーダーが集中しても結果的には十分に利益が生み出せるという可能性がある点です。

なので、人気メニューの人気を持続することができれば、集客および好調経営も持続する。

と理論上は考えることができるわけです。

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ワンオペに向いているのは・・・

ワンオペには向いている物件があります。

ピークの時間帯にはちゃんと忙しくなる店舗の前提で考えてみます。

向いているのは

・固定費(家賃、減価償却費)が低く抑えられる物件

当たり前のようですが、ワンオペと割り切ると見えてくるものがあります。

複数でオペレーションするとなると、複数が動きやすい動線プランや厨房、客席レイアウトが必須になりますが、一人だとその難易度はグッと下がり、ヘンな形のせいであまり借り手が付かない低家賃の物件が視野に入ります。

・ストックスペースがある程度取れる物件

ワンオペは仕込みを含めた事前準備を営業中に消費していく業種です。

準備したものを置いておく場所が非常に重要になります。

・もちろんあまり大きく無い物件

20席を超えてくると、全てをこなすのはどんな業態でも難しくなります。

グルリと囲んだカウンターばかりの店でも20席程度までと考えた方が良いでしょう。

通常の牛丼店のように営業時間中のスクラッチ度が非常に低い業態でも、ピーク時の25席は難しいようです。

新店だけでなく、既存店でも上記を参考にワンオペ店舗を選定していくということができます。

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将来的に複数オペレーションにする可能性がある場合

すすんでワンオペを選択する方もいれば、できれば複数でオペレーションしたいが様々な理由でワンオペを選択せざるを得ないという方もいらっしゃるでしょう。

後者では状況が許せば複数に戻すことも考えられるわけですが、先述の通り動線やレイアウトなどをワンオペ用に組んでいる場合、せっかく二人で厨房に入っても一人用のセッティングになっている為、あまり人数が増えた効果が発揮できないということになりかねません。

知人のラーメン屋さんでも人気の店舗になり、当初ワンオペで組んだ厨房でアルバイトさんと二人で営業することに変更したのですが、どうにも不効率になってしまっている気がして。

というお話を聞きました。

見ると、アルバイトさんは食洗機と丼、皿出ししか担当していません。

店主は麺茹で、複数種類の味わいに分けてスープの調理、スープと麺を丼に配置して、更にトッピングも盛り付けて、商品の提供。

とほとんどの仕事を担当しています。

これはやはりワンオペ仕様で全ての機能を店主の周辺に配置したことに原因があります。

このケースで考えると麺茹で用の水道直結のガス釜、その他調理用のガスストーブ、振り返りにあるIH機器、トッピングの盛り付けに使用する盛台ということになりますが、これらは配置の転換が困難な大型機器ばかりですよね。

将来的に複数のオペレーションに変更する可能性が残る場合には、ガスと水道が接続するものだけでも、将来のことを想像して配置することを忘れないようにしてください。

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アドバンテージを差別化に

飲食店のワンオペは複数による運営店舗とはまた違った経営的アドバンテージがあります。

その最たるものは他の店舗では検討されない物件を低家賃で取得できる可能性があること。

その上で原価率の高い人気商品をメニューの柱に据えることができること。

これらは複数オペレーションの飲食店ではあまり聞かないアドバンテージです。

この留意点を参考にしつつ他にないアドバンテージを活かして唯一無二の差別化の一助になればと考えます。

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