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飲食店が「客離れ」を恐れず値上げする方法|多店舗展開を支える利益と客数の新常識

集客

昨今の食材費の高騰や、最低賃金の引き上げなど、飲食店を取り巻くコスト環境は厳しさを増しています。「そろそろ値上げをしなければ利益が残らない」と頭では分かっていても、いざメニューの価格を書き換えるとなると、「常連客が離れてしまうのではないか」「客数が落ち込んで取り返しがつかなくなるのではないか」という恐怖感がつきまとうものです。 特に3店舗、5店舗と多店舗展開を進めている企業にとって、全店舗一斉の価格改定は影響範囲が大きく、経営者として非常に慎重になる決断です。 しかし、多店舗展開を軌道に乗せ、10店舗、20店舗と企業を成長させていくためには、この「値上げの壁」から逃げることはできません。今回は、長く飲食業を営む経営者だからこそ知っておくべき、値上げに対するマインドセットの転換と、多店舗展開ならではの価格改定の戦略について解説します。

薄利多売のまま多店舗化する「見えないリスク」

1店舗や2店舗の小規模なうちは、社長や店長の「個人の頑張り」で薄利多売のモデルを維持することも不可能ではありません。多少原価率が高くても、満席にして回転率を上げれば、手元に利益を残すことができるからです。

しかし、多店舗展開のフェーズに入ると、この方程式は破綻し始めます。
店舗が増えれば、各店を回すためのアルバイトスタッフが大量に必要になります。薄利多売で常に満席状態のピークタイムが続く店舗は、現場のオペレーション負荷が極めて高くなります。その結果、「忙しすぎる」「割に合わない」とスタッフが疲弊し、離職率が跳ね上がるのです。

アルバイトが辞めれば、新たに求人広告費をかけ、ゼロから教育するコスト(時間と人件費)がかかります。薄利多売で稼いだわずかな利益は、この「採用と教育のループ」にあっという間に飲み込まれてしまいます。
多店舗展開において、適正な利益率を確保できない価格設定は、結果的に組織を内部から崩壊させる要因になり得るのです。

発想の転換:「値上げ=労働環境の改善」である

ここで、パラダイムシフト(発想の転換)が必要になります。
値上げを「お客様への負担増」とだけ捉えるのではなく、「従業員の労働環境を守り、QSC(品質・サービス・清潔さ)を向上させるための投資」と考えるのです。

仮に、全品を10%値上げし、その結果、客数が1割減った場合のシミュレーションを見てみましょう。

  • 値上げ前: 単価1,000円 × 100人 = 売上100,000円
  • 値上げ後: 単価1,100円 × 90人 = 売上99,000円

「売上が1,000円減った」という事実だけを見ると失敗に思えるかもしれません。しかし、利益の構造は劇的に改善します。客数が1割減ることで「10人分の食材原価」が浮き、さらに調理や接客のオペレーション負荷が10%軽減されるからです。

現場に心と時間の余裕が生まれれば、一人ひとりのお客様に対して、より丁寧な接客や質の高い料理の提供が可能になります。結果として、「少し高くなっても、価値があるから通いたい」という優良な顧客層が定着し、スタッフの定着率も向上していくのです。

多店舗展開だからこそできる「テスト値上げ」戦略

とはいえ、やはり全店舗一斉の値上げはリスクが高いと考える経営者も多いでしょう。ここで活きてくるのが、多店舗展開の強みである「テストマーケティング」です。

最初から全店舗のメニューを書き換えるのではなく、まずは立地条件や客層が異なる「1店舗だけ」で先行して値上げを実施するのです。
例えば、ビジネス街の店舗でランチメニューを50円だけ値上げしてみる。あるいは、郊外店でアルコールの価格を少し上げてみる。

この「テスト値上げ」を通じて、以下のデータを収集します。

  • 客数はどの程度変動したか(価格弾力性の確認)
  • どのメニューの出数が減り、どのメニューが維持されたか
  • 客単価の上昇は、原材料費の騰貴分を十分にカバーできているか
  • 現場の残業代やオペレーション負荷はどう変化したか

これらの数値を1ヶ月ほど検証し、手応えを得た上で他の店舗へ段階的に展開していく。これができるのは、複数店舗を運営している企業の特権です。

どんぶり勘定からの脱却が、正しい値上げを可能にする

「値上げ」は、企業が次のステージへ進むための重要な経営戦略です。客離れを恐れるあまり、現場を疲弊させ、利益をすり減らしていては本末転倒です。

そして、この「テスト値上げ」や「客層の入れ替え」を成功させるためには、各店舗の売上、客数、出数、FL比率といった「データ」を本部で正確かつリアルタイムに把握できていることが大前提となります。「なんとなく客が減った気がする」といった感覚的な判断では、正しい価格戦略は打てません。

もし、現状の価格設定に限界を感じているのであれば、まずは自社のシステム基盤を見直し、全店舗の数値を正確に把握する体制(仕組み)を整えることから始めてみてはいかがでしょうか。正確なデータこそが、経営者の「値上げの決断」を後押しする最大の武器となるはずです。

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