「居酒屋第4世代」久しぶりの市場けん引役の登場。二極分化はホント?
とある大手メディアは同メディアの人気の企画であるヒット商品番付内で、新興チェーンを中心に低客単価で人気を集める居酒屋業態を「居酒屋第4世代」として紹介しました。 以来、業界でも、掲載された新興チェーン以外の経営であっても比較的新しく開店した低価格居酒屋を「居酒屋第4世代の店」や「第4世代系」と呼ぶようになっています。
とある大手メディアは同メディアの人気の企画であるヒット商品番付内で、新興チェーンを中心に低客単価で人気を集める居酒屋業態を「居酒屋第4世代」として紹介しました。
以来、業界でも、掲載された新興チェーン以外の経営であっても比較的新しく開店した低価格居酒屋を「居酒屋第4世代の店」や「第4世代系」と呼ぶようになっています。
目次
居酒屋の○○世代とは
居酒屋第4世代はお酒を扱う業態の中でこの数年無かったトレンドの業態です。
久しぶりの市場けん引のリーダーとも言えます。
これをより理解するために第1世代から順に短く紹介していきます。
居酒屋第1世代
第1世代では1950~70年代に創業し、居酒屋業態として本格的な大規模なチェーン化に成功した企業群を指します。
1980年代後半に最盛期を迎え、その後は次の世代に少しずつ覇権を譲ることになりますが、今に至っても数十~百数十軒それぞれがその屋号のままの店舗を残しています。
居酒屋第2世代
第2世代は1990年代以降に台頭し2010年代までに業界のリーダー格になった居酒屋チェーンを指しますが、当時、照度の明るい店内にドリンクにはカクテルを導入するなどの戦略で、より若者世代をターゲットにしています。
第2世代のチェーンは今では居酒屋に限らず外食全体のけん引役も担っている企業が多くあります。
第1、2世代ともに「総花型居酒屋」という点では共通しています。
また、ほとんどの店が3,000円弱の客単価というのも共通していると見て良いでしょう。
総花型とは枝豆やから揚げ焼き魚などの和を中心とした総菜に加え、ピザやチョリソーなどの洋風のおツマミも含めて全方位型のフードメニュー展開を指します。
居酒屋第3世代
第3世代では総花型から専門店型に変化した居酒屋チェーンを指します。
食材や料理、食材の産地を特化したメニュー展開になり、コダワリの表現としたというのが同世代の共通点だと言えると思います。均一価格などの独自戦略も実施されていますので、居酒屋チェーンの熟成および文化的充実期とも考えられます。
また、第1、2世代に較べて、ハコの大きさが6割程度の店が増えたのも、日本社会が集団から個へ向かう背景をそのまま映したものと見ることができます。
全体をおしなべるとコダワリを打ち出す分だけ客単価は少し高くなったという印象です。
コダワリは差別化の要素となり皿単価の戦略や食材の戦略などに応じて、客単価は2,500円台もあれば3,500円台もという風にチェーン毎に客単価の幅が広がりました。
居酒屋第4世代
食材や料理、産地、均一価格などのそれぞれの特化戦略があるのが第3世代の特徴であることは前述したとおりですが、特化の度合いをより先鋭化した上で、単価を更に低く設定しているのが第4世代の特徴です。
フードにもドリンクにも超低価格の目玉商品を複数用意し、それらをたくさん注文してもらうというのが共通した戦略です。
原価の観点から考えても目玉になるのは鶏の串が多く、見る限りどのテーブルにも目玉商品の串が大量に乗っているのが見えます。
また、コロナ期間中に他の企業が撤退した比較的立地の良い物件に展開することができたのも一つの特徴です。
20代~30代をターゲットにしている店舗が多いですが、現実としては40代~50代の来店も多いようです。
また、既存の業態ではあまりたくさん飲む印象がなかった若者世代ですが、第4世代の店舗ではたくさん飲んでいる姿も見られます。
ようやく自分たちのニーズに合う店舗が出来てきて、そこでお酒を飲むことの楽しさの経験を始めているのかもしれません。
居酒屋第4世代と対比した二極分化
二極分化説の背景
東京はミシュランの星の数が世界一多い都市です。
ビブグルマンなど星は無いけど美味しいとの評価を得られたミシュランガイド掲載店舗も年を追うごとに増えています。
これをもって前述の低価格居酒屋店の増加と対比し二極分化が進んでいるという論調が増えているようです。
確かに分かりやすい図式ですので、そのように解釈をすることも正しい見方のようにも思えます。
「星の数は世界一多い」のですが、実は近年少しずつ数が減っています。
代わりにビブグルマンやセレクテッドレストランなどの星付き予備軍が増えて全体としては掲載店が増えているという構図です。
予備軍の中には星付きを目指している店舗もあれば、一生懸命にやっていたら思いがけず評価された店舗もあることでしょう。
特に予備軍カテゴリーは必ずしも高級店ばかりではなく、1,000円台や2,000円台のお店も含まれます。
トレンド業態の要素は冷静に用いる
ミシュランガイドに掲載されているお店は東京でも500店程度です。
今後、増えていく可能性はありますが、現在は居酒屋第4世代と呼ばれる業態は代表的な企業以外の店舗を含めても全国で500店舗を超えるかどうかといったところだと見られています。
その他の数十万軒のほとんどがこの間に含まれているというのが実態です。
高級と大衆の二極で語るには少し乱暴なまとめ方であろうというのが現在の見解で、二極分化は気にする必要は無いと考えます。
客単価を低く設定した店舗が集客しているのは一つのトレンドであることは間違いありません。
ただし、いたずらに客単価を低く設定し追随するのではなく、低価格で売れる目玉商品を据え、それを大量に消費していただく戦略を同時に追求することや、店舗に遊びの要素を加えることなど、彼らの戦略のホントのところを読み解くことが今現在のトレンド業態を見るべき視点だと考えます。


