2年間の猶予期間を経て、2025年4月から「クルミ」が特定原材料(アレルギー表示義務品目)に追加されました。お客様の健康と安全を守るため、そして、お店を守るためにも、適切に対応することが重要です。

クルミを例に!「知らなかった」では済まされない!?アレルギー対応のこれから
クルミが義務化となった経緯について
消費者庁では3年ごとに食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査をし、報告書を公開しています。令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書によると、令和5年(2023年)調査結果から2017年と2020年の調査に引き続き、クルミ、カシューナッツなどの木の実類の即時型食物アレルギーの健康被害が継続して増加傾向にあることが明らかとなりました。中でもクルミは症例数が多く、鶏卵に次ぐ原因食物の第2位となりました。臨床現場(食物アレルギー専門医)では早急に義務化すべきとの意見もあり、後述する検査法が確立次第、表示義務化とする流れで進みました。また、その他の木の実類のカシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ及びペカンナッツの増加率も前回調査から 1.5倍以上であり、今後の推移を注意深く観察すべきとの意見も出ています。(令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書)
クルミは特に重篤な症状を引き起こす可能性が高く、アナフィラキシーショックの報告も多いことから、特定原材料への追加が決定されました。発症年齢は幼児期から成人期まで幅広く、微量でも重篤な症状を引き起こす可能性があります。症状は、じんましん、呼吸困難、アナフィラキシーなどです。
出典:消費者庁 令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書
クルミに関連して特に気を付けるべき食材について
特に気を付けるべき食材はペカンナッツ(ピーカンナッツとも呼ばれます)です。ペカンナッツは、クルミと同じクルミ科に属しタンパク質構造が類似しているため、強い交差反応性(同様の症状が誘発されること)があります。クルミアレルギー患者の多くが、ペカンナッツにも反応することが知られています。健康ブームでおやつにナッツを食べる方も増えていますし、サラダのトッピングで木の実類が乗っているメニューも見かけるようになりました。ミックスナッツには要注意ですね。
クルミってどんなものに使われている?
まずはクルミがどんな食材に使われているか、クイズで確認してみましょう!
次のうち、クルミを使っている可能性があるメニューはどれ?
A. カレーライス
B. ハンバーグ
C. ドレッシングのかかったサラダ
D. 全て
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正解:D. 全て
解説:カレーのルー(風味付けやとろみ付けに使用される場合がある)や、ハンバーグのつなぎ(食感や風味のアクセントとして使用される場合がある)、ドレッシング(風味付けに使用される場合がある)など、一見わかりにくいものにもクルミは使われていることがあります。クルミアレルギーは、ほんの少しの量でも重篤な症状を引き起こす可能性があるため、油断は大敵です。外見からは見えづらいので、食品表示を確認すべきですね。
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このようにクルミは様々な形で使用されています。原材料名だけでなく、製造工程も含めて確認することが重要です。
また、「walnut」といった表記も見逃さないようにしましょう。
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その他、お客様対応で気を付けることは初回コラムもご参考にしてくださいね。(初回コラムを読む)
調理スタッフだけでなくホールスタッフなど、お客様と接する機会のある従業員含め全員が食物アレルギーについて理解することが大切です。
特定原材料の検査方法について
一歩先を行くお客様対応ができるお店にするために、少し難しいかもしれませんが特定原材料の検査方法について解説したいと思います。
現在、特定原材料8品目は法律で義務化されており、食品1 gあたり特定原材料由来のタンパク質を10 μg(10 ppm)以上含有する場合 は表示することとなっています。牛乳を例に考えてみると、10ppmとは1リットルの水に0.01ml(スポイトで1滴垂らすよりも遥かに少ない量)の牛乳が混ざっている状態です。色やにおい等はほぼ水であり、10ppmがいかに少量かおわかりいただけると思います。
食物アレルギーが少量で発症することがご理解いただけたら、例えば「卵アレルギーのお客様へ提供するシーザーサラダに、キッチン担当がいつも通り温泉卵を乗せてしまった。提供前に気づき、乗せた温泉卵を取り除いてそのまま提供する」という対応がいかに危険かご理解いただけると思います(特に卵アレルギーでは加熱によりアレルゲン性が異なるため、生に近いほど症状が強く出る恐れがあります)。「教育が大事」と分かっていても、思うように上手くいかない時もありますよね。このコラムが一助となれば幸いです。
今回のクルミ義務化移行の通り、食物アレルギー表示の検査法を確立することが必要となるため、カシューナッツも検査法が確立され次第、義務化へ移行する流れとなります。
効率的に「食物アレルギー管理」ができるツール⇒食の安心情報サービス!
ASPITでは「食の安心情報サービス」を提供しています。今回のクルミ表示義務化に加えて、表示推奨品目のまつたけ削除、マカダミアナッツ追加にも対応済み!
食の安心情報サービスでは、食物アレルギーだけでなく栄養成分や原産国も管理可能。
飲食店と仕入先ともに食の安心情報サービスに加入すれば、メーカー様が入力した規格書(品質)情報を閲覧でき、そのデータを仕入食材と紐づけることでメニュー別にアレルギー管理をすることが可能です。また、メニュー別に食物アレルギーと栄養成分を表示させることができます。ぜひお気軽にお問い合わせください!
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